音源は唇?

生徒に「ラッパの音源は何?」という質問をすると「何でそんなわかりきった事を聞くんだろう」というような顔をするのが普通です。「音源は唇に決まっている」と思っているのです。そこで、「ピアノの音源は何?」と質問すると「ピアノ線」と答えます。「そうだよね、そのピアノ線の長さが変わると音の高さが変わるよね」「ラッパの音の高さは唇で変えるの?」と聞くと困った顔をします。音の高さを変えるためにはヴァルブを押して管の長さを変えなければならないからです。ピアノ線という弦が振動して音が出るように管の中の空気が振動して音になっているわけです。管楽器の音源は管の中の空気なのです。狭い隙間を空気が通り過ぎる時に波が起こり、それが管の中の空気を振動させて音になります。唇の振動音(バズィング音)なしでも音になるこの現象に着目する事によって楽に響く事が分かる場合が多いのです。
この間も調子を崩した学生にこの話をしながら基礎練習のレッスンをしていきました。その学生も「音源は何?」という私の質問にキョトンとしていましたが、練習していくうちにだんだんと楽に響くようになり調子を取り戻してきました。リップスラーは同じ管の長さで数種類の音の高さを移動する練習ですが、管の中に倍音があるわけです。管の中の空気と口の中の空気は繋がっています。その為に口に中で舌が微妙な動きをしているのです。舌が動かしているのは息の流れ(空気)であって舌で唇の振動音を変えているわけではありません。そういう感覚を持ってラッパを練習する事によって楽に響くようになり、調子を取り戻しました。調子が良かった頃はこの事が意識化されていなかったわけです。だから何かのきっかけで調子を崩しても自分では戻せないのです。「子音は前、母音は後ろ」という感覚もそこから分かってくるようになりました。
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